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価格の決め方

会社の価格はこう決まる①~純資産価額方式とは~

以前に「うちの会社はいくらで売れる?」というコラムで、「コストアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「インカムアプローチ」という3つの企業価値評価の考え方についてお話しました。今回はそのなかでも、会計上の純資産を元にその会社や事業に一体いくらくらいの価値があるのか、という視点から企業の価値を算定する「コストアプローチ」についてもう少し深く掘り下げていきましょう。

【純資産価額方式とは】

「純資産方式」は、コストアプローチによって会社や事業の売買価値を決定する際の代表的な方式です。対象となる会社や事業が保有している資産の時価から負債を控除した金額(=純資産)がその企業の妥当な売買価額だとする最もシンプルな方式です。株式投資をされている方にとっては、BPS(純資産÷発行済み株式数=1株あたりの純資産)という指標をもってその企業の安定性を判断することがあるので、お馴染みの考え方かもしれません。

【純資産価額方式のメリットとデメリット】

多くの中小企業は税法基準で会計処理をしていたり、不良資産をそのまま資産として計上している場合もあったりで、対象となる会社や事業の資産を時価で再評価する際に売り手と買い手で大きく意見が食い違ってくるケースも多々あります。それを踏まえて次に「純資産価額方式」のメリットとデメリットについてお話していきましょう。
先に述べたとおり、会社は税務上や会計制度上、様々なかたちで資産を保有しています。いざ、それらの資産の価値を評価しようとしても、正確な市場価値(=換金価値)を決定するのは非常に困難な面があります。貸借対照表上の純資産がその会社の実際の価値と必ずしも一致しない場合は、有効に機能しないということが「純資産価額方式」の1点目のデメリットとして挙げられるでしょう。2点目のデメリットは、「純資産価額方式」は、貸借対照表上の資産のみしか対象にしていないということが挙げられます。つまり、人的資産や営業権、のれん代といったものは一切考慮されないのです。これでは将来性のある優良企業の経営者にとっては大きなデメリットになるでしょう。逆に、有形固定資産が中心で人的資産やのれん代を継承しない場合や、のれん代を考慮する必要の無いグループ内での株主変更の場合などでは、「純資産価額方式」はシンプルで解り易いという最大のメリットを発揮します。

【スモールM&Aにおける純資産価額方式の一例】

想定しやすい具体例を挙げて、純資産価額方式を考えてみましょう。例えば、飲食店を廃業し居抜きで譲渡する場合を想像してください。従業員の雇用は引き継ぐ必要はありません。さらに、資産も店舗そのものや什器備品の類のみといったケースですと、この「純資産価額方式」は非常に有効に機能します。つまり、什器備品や造作物の状態から時価を評価し、什器などのリース契約の残債等を差し引いた金額を対象事業の売買価格と考えるのです。この評価方法ですと、売り手も買い手も双方が納得する妥当な売買金額となるのではないでしょうか。