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中小企業にピッタリ!経営者なら知っておきたい!「事業譲渡」のメリット

「事業譲渡」(もしくは「営業権譲渡」)というのは、会社まるごとを売却するのではなく、会社の「一部の事業」を売却する際に使われる言葉です。したがって売り手はその会社の株主ではなく、会社そのものになります。買い手も事業対価の決済は相手会社に対して行います。
この「事業譲渡」という手法(スキーム)は、新聞などを賑わすような大企業のM&Aの場合にはほとんど使われません。なぜなら大企業にとって「事業譲渡」は手間が煩雑になりすぎて、メリットよりもデメリットのほうが大きくなってしまうからです。しかしながら、中小企業にとって、「事業譲渡」はかなりのメリットがあるものなのです。

【大企業はなぜ事業譲渡をしないのか?】

先ほど、大企業のM&Aでは「事業譲渡」というスキームはほとんど使われないと述べました。では、なぜ大企業が「事業譲渡」というスキームを用いないのかについてお話しましょう。
まず1つ目は、売り手は、株主総会の決議を得なければならないということです。「事業譲渡」をするときには、株主総会の決議が必要不可欠です。一口に株主総会の決議を得るとはいっても、大変労力がかかるものです。一方、従業員が数十人以下の中小企業の場合だと、株主総会は極論すると家族会議と同じようなものですので、株を所有している配偶者とか子息、親戚などに話さえつけておけば、後は株主総会議事録を残してさえ置けばそれで済む話なのです。
2つ目に、買い手は、引き継ぐ従業員との雇用契約や取引先との基本契約等の全てに再締結が必要になるということです。「事業譲渡」の結果、その事業に関する取引の契約先あるいは従業員の雇用主は、全て買い手側の会社に代わってしまいます。ですので、買い手側名義で契約をしなおさなければ、ビジネスの継続が困難になってしまうのです。仮に従業員が1000人以上、取引先が数百社という大企業だと、契約の変更だけで膨大な作業量となることが容易に想像できるでしょう。1つ目同様、従業員が数十人以下の中小企業の場合を考えてみると、基本契約を締結している取引先は一般に十数社程度のものでしょうし、契約書の再締結もさほど煩雑ではなくなるでしょう。
以上のように「事業譲渡」というスキームが、大企業にとっては大変な手間と労力がかかるものである一方、中小の企業にとってみると、その煩雑さはデメリットとして挙げるほどのものではないということが、ご理解いただけるものと思います。

【中小企業にとっての「事業譲渡」のメリットとは?】

次に中小企業にとっての「事業譲渡」のメリットについてお話していきます。1つ目に挙げられるのは、会社全てではなく売却したい事業のみを譲渡できるということです。解りやすい例を挙げるならば、飲食店を3店舗を経営している会社が「業績が振るわない1店舗のみだけを売りにだしたい」といったことが可能になるということなのです。会社全体の売買をしなければならない株式譲渡ではこうはいきません。「事業譲渡」ならではの最大のメリットといえるでしょう。
2つ目のメリットは、買い手側は売り手の簿外債務を引き継がなくて済むということです。「事業譲渡」は、特定の事業だけを承継するという契約ですので、買い手側は帳簿に載っていない債務まで引き継ぐ必要はありません。そのため買い手側は、デューデリジェンス(買収監査)の期間もコストも抑えることができます。M&Aのハードルが下がるということで、売り手側にとってもM&Aの条件が有利に運ぶ可能性が高くなるととも考えられます。


以上のことから中小企業の「事業譲渡」はデメリットよりメリットが勝るということがご理解いただけたと思います。ただし「事業譲渡」によるM&Aでは、売り手側の企業が取得している許認可を引き継ぐことができないといったといったマイナスの面もあるので、事業譲渡がベターなのか、株式譲渡がベターなのかは、M&Aの目的自体によって大きく変わってくるといえます。税理士やM&Aアドバイザーとよく相談・検討されたうえで、そのスキームを決めるのが肝要でしょう。