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廃業を決めるのはまだ早い!~『事業承継ガイドライン』を読み解く ~

遅まきの感が否めないながら、中小企業の事業承継問題が大きく取り沙汰されています。2018年12月5日に発表された中小企業庁のデータ(『事業承継ガイドライン』)によると、中小企業経営者の年齢分布におけるピークが2015年に66歳となり(図1)、2020年頃に平均引退年齢である67歳~70歳に達する(図2)ことから、来年にあたる2020年頃に団塊経営者の大量引退期が到来し、その数は数十万人に及ぶと予測しています。

                

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また60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定(特に個人事業者においては、およそ7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答)しているという調査結果がでています。そのうち、後継者難を廃業の理由としているのは28.6%もの数字にまで上るとのことです。


当然のことながら、廃業予定企業のなかにも好業績企業が存在しており、後継者不在を理由にそれらの企業が維持している雇用や技術、ノウハウが失われてしまうのは非常に大きな損失といえます。このまま後継者問題を理由とした中小企業の廃業が急増してしまうと、2025年頃までに約650万人もの人々が失職し、約22兆円のGDPが失われる(『朝日新聞DIGITAL』 2018年4月1日)という見解も決して極言ではないと考えられます。

後継者候補を改めて考える



同族継承企業で後継者の不在率が高いのは「子どもが自分の道を進むケース」や「子どもに経営者の適性がないケース」といった理由が挙げられるでしょう。だからといって、廃業を検討するのはあまりにもったいない話です。そこで、社内に後継者候補となる従業員がいないか、今一度視点をかえてみてみるのも重要なことではないでしょうか。苦労を重ね大切に築き上げてきた会社のことは、誰よりも経営者が一番よくわかっています。自社の経営に関する知識や経験、ノウハウといったものは経営者以外誰も持ちえないものです。だからこそ経営者の判断が最も信頼に足るものとなるのです。
事実、「事業承継ガイドライン」でも「直近10年では法人経営者の親族内承継の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった親族外が6割超に達した。」とあります。

後継者問題の解決策としてのM&A

それでも、親族や社内に後継者候補を見出せず、健康面や年齢といった理由からリタイアまでの時間が限られているといった場合でも、諦める必要は全くありません。そのような場合こそM&Aという手段が非常に有効な解決策となり得るのです。
例えば、自社の事業に価値を見出してくれる売却候補先であれば、賃借対照表上にある資産は額面相当の額で評価してくれる可能性がありますし、廃業に要する様々な費用も不要となり、さらには社員の雇用を維持したまま事業承継を行える可能性も出てきます。また、買収に高いシナジー効果を期待する売却候補先と出会えれば、純資産以上の買収価額を提示してくれる可能性もなくはないのです。


中小企業は雇用や地域の活性を担う大切な存在です。まさに日本経済の「礎」といえるでしょう。事業承継は、経営者ならびに経営企業体のみの問題ではなく、日本経済の共通課題であるという認識で取り組むべきものなのです。


※ 文中のグラフはすべて中小企業庁『事業承継ガイドラインについて』より抜粋したものです。